kunbeのあれこれ雑記帳

読んでくれた人がクスッと笑えるような事柄を、時には事実に基づき、時にはウソ八百を書き綴ります。

童話の世界も壮絶なのね

童話の名を借りてお年寄りがよってたかって

ハチャメチャなことを書き散らかした文集の編集も無事終わり、

こ汚い文字との死闘を制したあたしは、誰知るよしもなく戦士の休息。

毎晩遅くまで頑張ったんだからちょっとぐらいサボってもいいんです。

ウヒヒ。

周りは何だか忙しそうにしてるけど

「お前らのノーリョクが足りないだけだべ」って知らん顔決めてます。

ケケケ。

いや、ホント、時間がある仕事だったからよかったけど、

締め切りが早かったら討ち死にしてたわ。間違いなく。

右手麻痺でリハビリ中のじいさんが書きなぐった原稿も、

出来上がってしまえば

「ふ〜んそうだったんだ。たいへんだったのね」って、

優しい気持ちで読み返せます。

太平洋のように心が広いからね、あたし。

確認のために何度も担当を走らせ、

時間を費やした割にはたいした内容じゃなかったんだけどさ。

戦後をどのように生きて社長になったかって自慢話…。

ほかの人が読んでも面白くないだろうなぁ…。

ぜんぜん童話じゃないし…。

ま、どうにかオッケーをいただきましたから、〝よし〟としましょ。

 

最初はこったら字しか書けないんなら、書くなやっ!って原稿を踏んづけ、

担当に八つ当たりしました。

いいか、お前が読めない字は俺も読めないからな!

お前が読めて俺が読めなかったらゲンコツしてやる!

問答無用だ!わかったか!

って5.15事件の兵隊さんみたいにヒステリックにいじめちゃった。

道端の水たまりのように狭い心にもなれるのね、あたし。

 

ごめんね担当。

でもね、営業さん。

お客様から、ただ原稿もらってくりゃいいんなら、あたしだってできるのよ。

一度くらいは目を通して読めるか読めないか見てごらんよ。

とくに手書きの原稿の場合はさ。

誤字やウソ字はまだいいけど、広い世の中には判読できない字ってのもあるんだよ。

お前は前回も俺に怒られただろ。

同じことを繰り返してると、そのうち見捨てられるぞ。

公衆トイレに落とした1円玉みたいに。

ナニ? 意味が分からない?

救う気もしねぇってことだよ。

お前は公衆トイレに落とした1円玉をわざわざ拾うか?

気がつかなかったことにして立ち去るだろ?

見捨てるでしょ。

……。

いいから。見捨てる……でしょ。

……。

見捨てろってんだよっ!

そうやって見捨てられる運命だぞってことだ。

ナニ? わたしは拾います?

1円を粗末にする人は1円に泣くんですぅ?

エッラそうに、きいたふうなこと言いやがって。

そんな奇特な奴はいねぇんだよ。

年末ジャンボの1等賞に当たった人くらい珍しいの。

なかなかいないのっ!

ん? ここにいます、だぁ?

当たったのか! 年末ジャンボ!

ん? ナニ、1円玉を拾う?

はぁ〜? 人の話の腰をまっぷたつに折りやがったな。全治半年だ。

いいか。俺が言ってるのはな、1円玉のことじゃないんだ。

少しは進歩しろってことだ。わかったかっ!

わかったらお前が折った俺の腰をもめ!

 

思い切り言ってやりました。

胸の中でね…。にゃはは。

……。

あ〜開放感!

 

ところでさ、その文集に一編、ゲゲゲって思わせる話がありましてね。

基本は童話愛好者の作品集ってことなんですけど、

ほとんど随筆、というか作文。

そのゲゲゲのばあさんも基本線から少しもはみ出さず、

思い切り作文なんだけど、内容にビックリ。

今でいうところのカミングアウト。…いや同性愛とかじゃなくてね。

過去の話をいきなり打ち明けちゃってさ。ほんとビックリ。

 

自分の息子さんがね、ダム湖に落ちて死んじゃったって内容。

そういうお話なのかなって思いながら原稿を打ってたんだけど、

どうやら真実の告白みたい。

えっ? 事実なの? 今言うか、ここで書くかそれ!って感じ。

 

昔、北海道にいっぱいあった炭鉱の町が舞台で、

そこには川をせき止めたダムがあって住まいもすぐ近くあったんだって。

―3月のある晴れた日、来月から小学校へ行くチー坊(自分の子ども)が近所の友達とそのダムに行ったきり帰ってこなかった。両親は一緒にいた友達にそれを聞き、あわてて捜しに行く。警察も消防も近所の人たちも総出でチー坊を捜した。ダム湖のほとりに滑り落ちたような跡があった。お父さんはまだ冷たいダムに飛び込もうとして近所の人に止められている。お母さんは泣き崩れ、近所の母さんが寄り添っている。消防隊の数人が潜った。だが、なかなかチー坊は見つからない。日暮れが迫っていた。お父さんも近所の人も大声でチー坊を呼ぶ。泣き崩れていたお母さんも大声で呼ぶ。静かな炭鉱の町に住民たちの呼び声が響く。日が暮れて捜索は翌朝に持ち越されたが、お父さんもお母さんも狂ったように泣き叫び、夜のダム湖に絶叫がこだまする―。

とまぁ、こんな内容です。

結局チー坊が発見されたのは、2ヵ月後だったそうです。

 

自分の子どもが死ぬなんて、考えたくもないし経験したくもないですよね。

でも、子どもがらみの事故はどこかで必ず起きてしまいます。

この痛みは当事者しかわからないものでしょうね。

この原稿を書いたおばあさんもずっと、

この痛みを背負って生きてこられたんですね。

辛かったでしょう。

 

童話集に、この話を書くのには理由がありました。

最後の文章です。

 

「チー坊はこのダム湖の鯉(こい)の王様になって幸せに生きています」

 

メルヘンにすることで、生きる力を得たんですね。きっと。

あたしのような人非人でも、チャカスことができません。ああ、心が痛いわ…。

 

そんな痛みを共有しながら、

仕事帰りにお茶を買いにコンビニに寄りました。

「148円です」

可愛らしい店員さんが見つめます。

俺に気があるのか。

そんなことを思いながら財布を開けました。

「ゲゲゲっ」

147円しかありません。何度数えても147円。

はずかしさで顔が真赤。

千円札も1枚も入っていません。

全財産が147円。

「すいませんお金足りなかったっす」

商品を元の棚に戻し、スゴスゴと車へ逃げたのでした。

1円に泣いた1日の終わりでした。

はぁ、営業の勝ち。ね。

合掌…

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