kunbeのあれこれ雑記帳

日々の暮らしの中で感じたこと思ったことを、わかりやすく、おもしろく、それなりに伝えようと思います。

紫陽花やきのふの誠けふの嘘

 

妹よ お前は 器量が悪いのだから 俺は ずいぶん 心配していたんだ

あたしがギターを覚えたてのころ、よく弾いて歌っていた「かぐや姫」の

「妹」の二番にある歌詞です。

あたしの妹も器量が悪いので、そんな妹の顔を思い浮かべながら歌ったものです。

 

長いこと妹に嫌われていたので、中学高校時代はほとんど口を利くことのない間柄。

お世辞にも仲良しとはいえませんでした。

原因は、あたしが悪い仲間とつるむようになったせいだって、

十数年経って初めて聞かされました。

 

思春期って難しいのね。

 

当時、両親は夫婦仲がきわめて悪く、あたしはそれが不満で、

夜な夜な出歩いていました。

妹はその内気な性格から胸の内を誰にも打ち明けられず、

帰宅後は部屋に閉じこもってハードロックの爆音を響かせ、

じっと耐えていたんだとか。

今思うと、妹の方がつらかったのね。絶対。

 

都内の病院で看護師をしていた妹が、いきなり看護師の国際資格を取ると言い出して、

20代前半に単身イギリスへ飛び立ってもう四半世紀以上です。

そこでロバートと出会い、結婚。

人生の半分をロンドンで暮らしています。

物書きのロバートが、しっかり稼げるようになり生活も安定したみたい。

よかったよかった。

ってゆーか、完全に負けてます。あたし。

 

先日、妹にかぐや姫の「妹」の歌詞と同じように俺も心配してたんだぞって言ったら、

ギロリとにらまれちゃいました。

でも、日本にいたらきっと妹は、今も独身だったとあたしは信じています。

外国人だから美的感覚が違ってるから、選んでもらえたに違いないと。

にらまれた上に、また口を利いてくれなくなると寂しいから、絶対に言えませんが…。

そんな妹も今年で五十路の仲間入り。

やっぱ老けたなぁなんて、しみじみ感じちゃいました。

 

さて、妹家族一行が帰国する前日の6月25日の土曜日、

あたしは仕事をサボり、おまけにレンタカーまで手配して、

一日中意思疎通ができない彼らと一緒に過ごすイバラの道を選択しました。

えへへ。えらいでしょ。

「苦渋の決断」って、こういうときに使うためにあるのね。

われながら大英断。自分で自分を褒めてあげました。

 

ホントはピーカンの空の下で、恵庭市にあるサッポロビール北海道工場を見学して、

評判のいい庭園も堪能して、

ついでに併設されているパークゴルフ場で久しぶりのパークゴルフを楽しみ、

しかもこれまた併設のレストランで、できたてのビールをがぶがぶ飲みながら、

ジンギスカンに舌鼓を打ち、お腹がパンクするまでたらふく食べるって

予定だったんです。

あたしはあんまりたくさん飲めないけど、

そこはカミさんがしっかりカバーしてくれるはず…。

なんたって最後の晩餐は、

親愛なるブラウンアイズの義弟、ロバート様のおごりだって聞いてたからね。

容赦なく食いまくるつもりでいました。

が…、予定は豪雨に跡形もなく流されちゃいました。

しかも天気予報では、道内どこへ行っても一日中大雨アンド強風だって。

 

どうするって話になりまして、一生懸命考えてくれたのは妹とカミさん。

とくにカミさんに感謝だわ。あたしはひたすら天気を呪ってただけだったから。

で、吹きガラス体験をしに運河のまち小樽へ行くことに。

なんとか予約も取れて、ついでに水族館も見学するそうな。

みんなひと安心でうれしそう。

テレビでしか観たことのない長い鉄のストローみたいなものに

プゥーッと息を吹き込んで、ガラスを膨らませてコップを作る魅力に

すっかり取り憑かれていました。

 

案の定、当日はすっごいどしゃ降り。でも小樽に着く頃にはすっかり晴れました。

あたしの呪いが雨に勝った瞬間です。神通力だね。

「平成の安倍晴明」たぁあたしのことでぃ!って気分爽快です。

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まずは小樽水族館。ここは吹きガラス体験の時間調整で寄っただけなので、

足早に見学です。ピンぼけ写真1枚撮っただけ。

実際はすごく美味そうなオオダコでした。

刺身で何人前でしょうか。

ついつい食うこと中心に物事を考えちゃいます。

 

美味しそうな魚介類に別れを告げ、

本日のメーンイベント、ガラス工房へと乗り込みます。

ここには英語を話せる先生がいてロバートたち3人はその先生のお世話になることに。

流暢な英語で楽しげに会話して、早速吹きガラス体験突入です。

体験料はお一人様2500円。何種類かのオプションが数百円からありました。

体験時間は一人20分程度。カリキュラムに沿ってどんどん作業は進みます。

力強く吹いて膨らませるのかとばかり思ってましたが、

優しく吹くだけ…。なんか物足りない…。

燃えたぎる炎の中へガラスを入れたりするのは先生がやっちゃうし、

唯一難しく感じたのは、ピンセットのお化けのようなものを

ガラスの先端に突っ込んで口を広げるところくらい。

溶けかけた飴のようなガラスは、面白いように口を広げてくれます。

その後の仕上げ行程は全部先生たちのお仕事。

「お疲れさまでした」。で終了です。

 

まぁね…。分かっちゃいましたよ…。いましたけど、やっぱ物足りないわ…。

要するに2500円で自作のグラスを買うってことなのね。

100均なら25個も買えるけど。

そこはまぁ、世界に一つしかない手作り品てことで

そこに価値があるんだと無理矢理自分を納得させました…。

 

仕上がりは後日配送ってことで、ここで送料も追加。

なんだか高い買い物しちゃった感が否めません。

でも、妹もロバートも喜んでくれたみたい。

「俺、こんなの作ったぜ」みたいな会話を笑顔でしてましたから、よしとしましょう。

ちょっぴりトホホですけど…。

 

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          どうだいオレもなかなかやるだろ的な表情を見せる義弟。

 

工房を後にしたあたしたちは、お決まりの小樽運河周辺の観光です。

風は強かったけどよく晴れていたので、観光客も大勢。

思い思いのお土産を買い込んでいました。

あたしたちも負けじといろいろと買いました。

なぜかは分かりませんが、一番の買い物はハチミツでした。

「小樽に関係あるの?」

カミさんに聞きましたら

「I don't know」

定番の外国人ボケを返されました。

近年めきめきと頭角を現し、すっかり有名になった「ルタオ」で

糖分補給。本来、あたしとカミさんには不要なものですが、ココはお付き合いで。

有名TV・雑誌で多数紹介された【LeTAO】のチーズケーキ♪

 

午後6時になり最後の晩餐に向かいます。

で、何を食わせてくれるんだい」と妹に聞きますと

「メロディがラーメン食べたいんだって」

「ラーメン!?」

「うふふ、ごめんね!」

ええーっ! 最後の晩餐がラーメン!

6人分だけど、どんなに高くても1万円もかかんないべや!

おにょれメロディ! なんでラーメンなんかリクエストしたんだ!

夕べはそんなそぶり、みじんも見せなかったくせしてぇ。

だまされたぁ…。

裏切られたぁ…。

 

ロバートを破産させるもくろみが、もろくも崩れ落ちた瞬間でした。

シクシクシクシク36。

 

あたしは旨味噌ラーメンなるものを注文したんですけど、

ちょっぴり塩辛っかたです。

涙の味がブレンドされて…。

 

ロバートたちはラーメン最高! みたいに盛り上がって、

お互いのラーメンを味見して得意の親指突き出しポーズ。

いいねってリアルファイスブックです。

美味しいお店だったけど、ため息がニンニク臭いわ。

はぁあ…。

 

さぁ、気を取り直して本日の一句。唐突に登場しちゃいます。

 紫陽花や きのふの誠 けふの嘘

      (あじさいや きのうのまこと きょうのうそ) 

 

なんといっても「マコトとウソ」がキモですね。

なんか都々逸(どどいつ)っぽい世俗さも感じます。だから好きなんですけど。

 

いったい誰に対して、何に対して「昨日のマコト今日のウソ」なの?

何があったの? どしたのどしたの

よかったら話してごらん?って気持ちになります。

…。なるでしょ。

花の色が変わる紫陽花の代表的な花言葉は「移り気」です。

恋愛経験者なら「移り気」って聞くと浮気を連想しちゃうでしょ。ね。

するでしょ。してください。お願いします…。

で「移り気」「浮気」とくれば、これはもう男女間のもめ事しかないわけですよ。

ね。そうでしょ。……。コホン…。いいわね。

女性のウソか男のウソか。言った言わないやったやらない、情がこじれて痴話げんか。

なんて世の東西を問わず、いつの時代にもあふれている男と女の色恋沙汰。

ね、連想しちゃうでしょ。でしょ。ね。

やっぱ、俳句っていうより都々逸っぽいんですよね。

あたしは絶対そう思います。

 

実はこの俳句の作者は、知っている人も多いと思いますが、

近代俳句に多大な功績を残したといわれる正岡子規(まさおかしき)さんなんです。

「柿食えば鐘がなる鳴り法隆寺は誰もが一度は口にする名句ですよね。

松尾芭蕉を否定し、与謝野蕪村を賞賛したことでも有名です。

文学や美術においては簡潔な描写が表現として大きな効果を上げると確信。

「写生」の手法の重要性を説き、自ら実践した人でもあります。

彼の俳句革新により、低迷していた明治の俳句界が生き返ったともいわれています。

あたしは「柿食えば…」以外に覚えているのは上記のこれだけ。

あまり好きになれない作家の一人です。

どうしてかは分からないけど、なんかピンとこない俳句が多いんです。

あたしにとっては。

 

あたしの勝手な分類では、色恋を文学的表現で格調高く歌い上げたものが

俳句や短歌。

庶民的で駄洒落が多く戯(ざ)れ歌ともいわれる都々逸などは、

言葉遊びの勢い余って詠んじゃった、みたいな下世話な香りがプンプン。

どちらかというと滑稽話のジャンルに入るような感じで、

落語などのお笑いに近い存在に思えます。

でも、心にしみるものがたくさんあるんです。

七七七五のリズムで詠む都々逸は、

そもそも江戸時代末期の演芸の出し物だったらしいです。

そうだったのね。「ウィキペディア」さんありがとう。

ホント役立つ心強い存在ですね。

 

ちなみに手元にある資料から紹介すると、

「惚れた証拠にゃお前の癖が みんなわたしの癖になる」

「一人笑うて暮らそうよりも 二人涙で暮らしたい」

「惚れて通えば 千里も一里 逢えずに帰れば また千里」

「逢うた夢見て笑うて覚める あたり見まわし涙ぐむ」

「岡惚れ三年 本惚れ三月 思い遂げたは 三分間」

「帯もできたし箪笥(タンス)もできた そろそろ旦那と別れよか」

「面白いときゃお前と二人 苦労するときゃわしゃ一人」

 

恋愛や夫婦間の悲喜こもごもを笑いに変える

庶民の生命力が感じられるものがたくさんあります。

あたしはこういうの大好き。

 

今回の最後の晩餐で、あたしは前出の俳句を強烈に思い出しちゃいました。

豪華な食事をしようねって昨日までは言ってたよな。妹!

お前の豪華な食事はラーメンなのか! 妹!

 

ラーメンを悪くいうつもりはないけどさ…。

2年後に里帰りしたときは、高級な肉料理をごちそうしてくれ!

回らない寿司でもいいぞ。

それまで首を5メートルぐらい長くして待ってるからな!

覚悟して「帰っておいで 妹よ」

「妹」の四番の歌詞で締めくくりです。分かる人が何人いるか…。

 

そうそう、子規には同じ紫陽花を詠んだ俳句に

紫陽花や はなだにかはる きのふけふ

(あじさいや はなだにかわる きのうきょう)

なんてのもあります。はなだってのは薄青色の意味ですって。

あじさいの花の色の変化にかけて人の心の移り変わりを詠んだものです。

これだったら昨日のマコト今日のウソの方が、断然面白味がありますよね。 

 

なかなか更新ができなかったので、長々長々書いちゃいました。

妹家族プラスワンが帰って一週間。仕事も疲れもたまってたのね。

 

最後まで読んでくださった皆様にはきっと幸せが訪れます。

心からそう祈念いたします。

とりあえずのぞいてみただけの皆様にも、幸せが訪れますように。

それなりにお祈りしてあげちゃいます。

では。バイナラ。