kunbeのあれこれ雑記帳

読んでくれた人がクスッと笑えるような事柄を、時には事実に基づき、時にはウソ八百を書き綴ります。

無駄話シリーズ第二弾 事件は喫煙所で起きている

少し前になりますが、社会復帰した当時のお話です。

 

当然のことですが、あたし、入院中は禁煙していたんです。

病院内は全面禁煙でしたし、歩けなかったので外出することもできず、

吸えないとあきらめていたからかそれほど強い禁断症状に悩まされることもなく、

思いのほか楽にタバコなしで過ごせました。

かれこれ丸1カ月禁煙したんですから、

これならスパッとやめられるなと思っていました。

自宅で4日間ほど過ごし職場復帰したんですが、

これがいけませんでした。

 

「お兄さんお兄さん、いいコがいるわよ」と同僚たち。

有無を言わせず喫煙所に連れ込まれ、

「まずは職場からの退院祝いの一服を受け取れ」

とにらみつけられます。

「いや、その、1カ月間吸わずに過ごしたんで、このまま禁煙しちゃおうかと…」

「あんだとぉ!」

「!、?」

「オメェ、俺らのタバコが吸えねぇって言うのか!」

「ちょっと見ねぇ間に随分エラくなったもんだな。ああん!」

同僚たちが憤ります。

「まぁまぁ、そんなに怒らずに。おだやかに話せばわかってくれるさ」

役員でただ一人の喫煙者の専務が

「な、kunbeくん」

とその場を収めるように話し出しました。

「まぁ、君の気持ちはわからんでもない。ただ同僚がお祝いにと言うものを無下に断るのはヒトとしてどうかな? 私は君がそんな人間だとは思いたくないなぁ。1本だよ1本。たった1本で君の社内の今後が変わることもあるんだよ。ね、大人になろうよ」

「う、あ、はい、はい! 喜んでいただきます」

あたしの社内の今後が変わるかもという、

強烈な脅し文句の前にたやすく屈服して一服。

再び口にしてしまった禁断の果実です。

身体中をニコチンが走り回る快感に酔いしれちゃいました。

「あ〜、う、うまい」

1本吸ってしまうと雪山に一筋の亀裂が入り雪崩が起きるように、

もう1本もう1本と肺に煙を送り続けなければ生命が維持できない状態に陥り、

気がつけばうつろなまなざしでシャブを求める中毒者。

スパッとやめるどころかスパースパーっと、白い煙を吐き続けてます。

二度と抜け出すことのできない底なし沼に、

まんまと飲み込まれてしまったのでした。

 

持つべきものは良き同僚。

彼のへなまずるくうすら笑う、

うれしそうな表情は一生忘れることはないでしょう。

 

その日を境に社内でのあたしをみる目が

以前よりグンと厳しくなったように感じていました。

まぁ、以前から厳しい目で見られていましたけどね…。

…。クスン。

 

なんと、あいつら あたしをダシに賭けていたんです。

 

 

「ほぉら、な。やっぱりあいつは禁煙できなかっただろ。わはは。俺の勝ち俺の勝ち」

「くっそぉ! もうちょっと骨のある野郎かと思っていたけど、やっぱりか」

「あいつは何より誘惑に弱い。若い頃から見てきたから自信あったぞ」

「くっそー! 5000円は痛いな。100円に負けてくれ」

「ダメダメダメ。さっさと払った払った」

 

あたしがいない喫煙所でこんな会話をしてましたよと、

喫煙者の若造くんが教えてくれました。

 

賭けは同僚Aの一人勝ち。

雄弁に語った専務は賭けに参加していなかったようです。

あんたのせいで、あたしは再び冥府魔道をさまようことになったんだぞ!

何がヒトとしてどうかな?だ。ふざけんな!

君の社内の今後が変わるだとぉっ! けっ、変えれるもんなら変えてみろってんだ!

 

とは言いません。

強いものには逆らわない主義ですから。

 

……。クスン。

 

結局、同僚BとCが5000円ずつ巻き上げられたそうです。

 

よぉっし! 今度同僚Aと顔を合わせたら、

こってり小言爆弾をお見舞いしてやろう。

でも、あいつはちゃっかりしてるし、あれで頭も切れてずる賢いからな。

う〜ん、なんて言おうかな。

なんて考えていると、偶然、喫煙所で二人っきり。

「やっと二人きりになれたね」

「なんだよ、藪から棒に。気持ちわりーな」

同僚Aが先に話しかけてきました。

「まあ、そう怒んなよ。賭けをしてたのは知ってるんだろ」

「ああ、俺は笑い者だよ。意志薄弱のへっぽこ野郎ってな」

「ぎゃはは。へっぽこ野郎は昔からじゃないか」

「あんだぁ!」

「怒るな怒るな。どうだい今夜付き合わないか」

「バーロー。オンナ口説いてんじゃないんだぞ。誰がお前なんかに付き合うか!」

「まぁ、そう言うなよ。新しくできた寿司割烹の店。なかなかの評判なんだ」

「寿司割烹の店?」

「おうよ」

「いくいくいくいく。お前のおごりだぞぉ」

「わかってるよ。じゃぁ、7時に」

「うふふ。7時ね。りょ〜か〜い!」

 

ダシにされた怒りなんか忘れて、

まんまと丸め込まれたダシ巻きタマゴのあたしです。

 

なによ。美味しかったんだからいいじゃん。

どうせ意志薄弱のへっぽこ野郎よ。

 

ふん、話はこれでおしまいよ。

お腹がきつくて苦しいわ。

さ、おフロに入ってさっさと寝るわよ。

おやすみ!

 

やめられなかったタバコのことも、

賭けのダシにされて笑い者になった悔しさも

全部自分が悪いってことはわかっています。

いい歳こいて自分が情けなくて、腹が立ちます。

 

でも、あいつなりに気を使って詫びを入れてくれたし、

何より美味しかったし…な。

ま、いっか! 気にしない気にしない。

こうやって情けない思いを繰り返しながら死ぬまで生きるんだ。

人生なんてそういうものよね。

 

 

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