死刑へのカウントダウン
前回もちらっと書いたんだけど、「クリミナルマインド」ってご存じですかぁ。
アメリカ合衆国で放送されている人気ドラマで、FBI行動分析課(BAU)のメンバーがプロファイリングを駆使しながら犯人像を推理して、事件を解決していくという基本一話完結型のクライムサスペンスです。
アメリカでは、シーズン10ができるんだか放送されんだかって話ですから、現在も続いてるんですね。
やっぱ、人気あるんだね。よかったよかった。
このドラマには、これでもかっていうくらい異常者が登場しては、残虐な事件を起こします。アメリカって国には変な人しかいないんじゃないのって、本気で思っちゃうくらいに。
子供の頃に親から虐待されて、なんてぇのは当たり前です。
悲惨な国です。
でもエンターテインメントはすばらしいと思います。
日本のテレビ局にはこんな真似できないだろうな。
あたしは日本のテレビドラマに疲れて、観なくなって久しいので、最近のドラマ事情には疎いのですが、実態はどうなんでしょうね。相変わらず若い男女がくっついたり離れたりを軸に制作されているんでしょうか。
飽きちゃいませんかね。みなさん。
とにかくクリミナルマインドは、あたしが今一番ハマってるテレビドラマです。
スカパーの「スーパードラマTV」やBSの「D-life」でも放送されています。
そうそう、WOWOWが一番最新のを放映しているらしいんですが、あたしは加入してないので観ることはできません。もう少し安けりゃいいんですが…。
なので観てる人もきっと多いんじゃないかな。
あたしは、もっぱら吹き替え版で見るんです(字幕版だとずっと見てないと何を話したのか分かんなくなっちゃうんで…)が、アフレコって技術もなかなかすごいなぁって、感心しています。アフレコについては、またの機会に書きますからね、必ず。
さてさて、流行に遅れて感染するのは、あたしの得意技の一つですから、
「おっさん、いまさらなんやねん」
なんて冷たい顔しないで聞いてやってくださいね。
すでに日本でのブームは去ったのか、本来ブームになったのかさえ、知ることはできませんが、個人のブログなどでもさんざん紹介されちゃってますから、支持者は多いんだと思います。
その中でも人の生き死にというか、生き方をテーマに据えたとても重厚な傑作とあたしが勝手に思っている作品を紹介させてください。
ちょっと古いので恐縮ですが、
シリーズ1の第14話「死刑へのカウントダウン」ってぇのがそれです。
サイコパス(簡単に言うと連続殺人犯)の旦那を持った奥さん「サラ」の決心とBAUのギデオン捜査官との心の葛藤が主軸です。
旦那はどうしようもない変態野郎で、十数人の若い女の子を拷問の上殺害しています。
サラは、旦那が作業場に若い女の子を連れ込んでいることは知っていましたが、殺していることまでは知りませんでした。
ただ被害者たちの死には、無視していた自分にも責任があるという罪悪感と後悔があって、事件の裁判では旦那との共犯扱いもされているのに、否定も肯定もしません。サラは唯一、最愛の息子を殺したことだけを認めます。そして死刑判決を受け入れ、旦那と二人、同じ刑務所で執行を待つ身となるのです。
ドラマは、この変態野郎の犠牲になった13人目の被害者が発見されたことから、調査のためにBAUメンバーが彼らのいる刑務所を訪れることから急展開します。サラは息子の殺害だけを認めていますが、息子の遺体は見つかっていません。ギデオンが聞いても「安全な場所」とか「よりよい場所」とか言うばかりで具体的には示さないのです。
やがて彼女が刑務所の独房で描いていた、3枚の絵からギデオンは少しずつ真実に近づきます。
彼女は息子を殺していないのではないか。
当初はサイコパスに追従する服従者として、彼女をみていたギデオン捜査官ですが、
彼女の描いた1枚の絵の後ろに隠されていた新聞の切り抜きを発見して真実を見抜きます。
息子は生きている! 彼女は殺していない!
サラは連続殺人鬼の夫をもだまし、自分で殺したことにして、愛する息子を逃がしていたのです。
それがサラの言っていた「安全な場所」「よりよい場所」だったんです。
息子は、養子縁組をした夫婦の元で才能を開花し、幸せな人生を歩んでいました。
当然BAUメンバーたちは、急いでその夫婦を捜します。
しかし、死刑執行まで、もう時間がありません。
サイコパスの夫の支配から逃れ、最愛の息子だけは守り通した母の愛。
自分の命なんてどうでもいいんです。母は強しです。
観ている方はハラハラドキドキ。
このまま刑は執行されてしまうのでしょうか。
無実の罪で死刑台に送りたくはないギデオン捜査官は
「わたしは君の命を救いたい」と真剣なまなざしでサラを見つめ、そう言います。
「わたしの命はジェイコブ(旦那)と会ったときに死んだ」と、死刑に固執するサラ。
サラの決心は微動だにしません。
サラとの面会を重ねるたびに、漂う不思議な親近感。
善人同士に芽生える友情のような切なく甘い感情。
最後の最後まで諦めなかったギデオン。
死刑が執行される、というところでようやく息子の居場所がわかります。
それでも息子が連続殺人夫婦の子供として生きていくことの厳しさから解放することを望むサラ。
だからこのまま自分の人生に幕を下ろしたいとギデオンに訴えます。
息子のためにも生きてほしいと説得するギデオン……。
ラストは切ないです。
だけど納得です。
とても考えさせられる感動巨編といっていいと思います。
子供を思う母の愛が存分に描かれた傑作です。
役者さんも素晴しかった。
母親役の女優さんが特に素晴しいです。
いろんなドラマでちょくちょく見る顔ですが、あたしには名前も判りません。
彼女の眼差しはすべてを達観したかのように慈悲にあふれています。
ギデオン捜査官もいい役者さんなんですねぇ。
こちらも名前は判りませんが、この二人のやり取りだけで十分に泣けちゃいます。
ギデオン捜査官は、シリーズ3の途中でいろんな事情があってBAUからいなくなっちゃうんですが、圧倒的な迫力と存在感でした。
演技ってのは言葉がなくても伝えられるんですね。
映画にしてもよかったんじゃないのって思いました。
とても考えさせられます。
生きるとはどういうことか。
究極の自己犠牲の選択です。
普段、あまりものを考えることのないあたしも、涙と鼻水をすすりながら考えました。
まだ観ていない方がいらっしゃいましたら、だまされたと思ってぜひ観てください。
このクリミナルマインドについては、今後もいろいろ書いていこうと思っています。
ガマンして読んでね。