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kunbeのあれこれ雑記帳

読んでくれた人がクスッと笑えるような事柄を、時には事実に基づき、時にはウソ八百を書き綴ります。

■暑い夏を涼しくネ

こちらは涼しい毎日が続いているんですが、

各地は猛暑なんですね。うらやましい。

夏は夏らしくきっちり暑くなりなさい!

とお天道様をにらんでみても、

雲に隠れて知らん顔。

見込みないね。今年の夏は…。

北海道でも、猛暑の便りがあちこちで聞かれてるってぇのに、

あたしの周りだけ冷夏だわ。

最高気温も25度を超える日が少ないんです。

このまま秋に突入かぁ。

昨日はアキアカネが飛んでたし…。

はぁあ…。

 

って愚痴っていても仕方がないから、

暑い夏を過ごしている皆さんを

少しだけ涼しくしてあげますね。

といえば、やっぱりこれ、

ビールじゃないよ。

怪談だよ〜ん。

 

えっ、

 

「お前の話はいつでも寒い」

 

 し〜ん。………。

聞こえないふりしちゃうもんねぇ〜!

 

■あたしの心霊体験

 

東京で就職してすぐに名古屋で本社研修になりました。

半年間の寮住まいです。

家賃や光熱費はかからず、食事は各自負担という条件でした。

全国の各支社から集められた新人10名。

もちろん男ばかり。

「こんなむさ苦しい奴らと半年も暮らすのか」

と悲観にくれました。

でも当時としては珍しく、全員に個室があてがわれたことが救いです。

4月というのに名古屋は暑く、

着替えとラジカセしかない6畳間は、

やけに広く感じたことを覚えています。

あたしの隣の角部屋は青森県から来た酒井君という、

気が弱そうな、やせっぽちの青年でした。

彼の部屋の押し入れには小さなシミがあり、

酒井君はやたらとそれを気にしていました。

研修から一週間が過ぎた頃、

酒井君があたしの部屋に来て、

自分の部屋の押し入れを見てほしいと言います。

疲れていたので嫌だったのですが、

真剣な目をして訴えるので渋々見に行きました。

部屋の中は、あたしのところと同じように

支給されたせんべい布団と着替えだけ。

畳の床が目立ち殺風景でした。

押し入れの中を覗くと、

シミが大きくなっているのが分かりました。

小さな点だったはずが、渦巻き状に広がっています。

どこかから水がしみ込んでいるようでした。

押し入れの壁の向こうは外のはずですから、

外の壁から雨水がしみ込んだのでしょうか。

あたしはその渦巻き状のシミにふれてみました。

ひんやりしていましたが、濡れてはいません。

水がしみ込んだのではないようです。

「よく分かんないけど、水がしみたんじゃないみたいだね」

あたしの言葉を聞いているのか、酒井君は心ここに在らずといった感じで、

じっとどこかを見ています。

しばらくして意を決したように

「たのむから部屋を代わってほしい」

と言い出しました。

「実は、毎晩怖い夢を見るんだよ。ここへ来てからゆっくり眠れないんだ」

「夢?」

「うん」

「どんな」

「言ったら笑われるから、詳しくは言いたくない」

「俺も怖い夢見るかもしれないじゃん」

「いや、君ならきっと大丈夫さ。明るいから」

「えーっ、本気で言ってんのぉ!俺だってそんな話聞いたらおっかないよ」

「お願いだから代わってくれ」

「ちょっと考えさせてよ」

あたしが嫌がったので酒井君は渋々引き下がりました。

それから一週間後。

酒井君は突然会社を辞めちゃいました。

寮の仲間には誰にも言わず、

出社した時に上司から辞めたことを知らされました。

その夜、寮に戻って何人かで酒井君の部屋を見にいきました。

せんべい布団がたたまれて、壁際に置かれているだけの部屋は、

がらんとしていて少し寒く感じました。

「そういえば」

思い出して、あたしは押し入れを開けました。

一緒に覗き込んだ高橋君が悲鳴を上げました。

あたしは腰を抜かしました。

ほかの奴らもびっくりしていました。

例のシミは、

へその緒がついた胎児のように

なっていました。

誰が見てもそう見えます。

「うぎゃーっ」

誰ともなく叫び、部屋を飛び出しました。

酒井君の部屋の押し入れのシミのことは

寮のみんなが知っていました。

でも、胎児の姿に変わっているなんて思いもしませんでした。

その夜、寮生たちは1階の寮長の部屋に集まり、その話で持ち切りでした。

「あの野郎、おとなしそうな顔して、

 ちゃっかりどこかの女を妊娠させたあげく中絶させたんだな。

 それを恨んだ赤ん坊がシミになって出てきたんだ」

みんな同じ考えでした。

部屋を代わってほしいと言われたのが

あたしだけじゃないことも判りました。

「あんなの出てきたら俺も逃げ出すわ」

「おれも」

「おれも」

「あたしも」

みんなそれぞれビール片手に夜更けまで語り続けました。

さらに自分の怖い体験談や

女の子とのエッチな話などで盛り上がりました。

ホントはみんな怖くて、一人の部屋に戻りたくなかったんです。

少なくともあたしは…。

気がつくと明るくなっていました。

寮長の部屋に男9人が折り重なるように雑魚寝してました。

その日の仕事の辛かったこと。

体の節々が痛くて痛くてたまりませんでした。

 

この話には後日談があります。

5月の連休が終わり再び仕事モードに入った時、

同僚の今井君が新聞を持って飛び込んできました。

「これ見ろよ。酒井だぜ」

「?」

「酒井の野郎、女殺してたんだ」

「なにっ!」

「付き合ってた女を殺して埋めてたんだとさ。

 その死体が発見されて、酒井が逮捕されたってよ」

「ほ、ホントか!」

「ああ、ほら見てみろよ」

今井君はあたしに新聞をわたすと

早く読めって顔をしています。

あたしは急いで読みました。

内容は今井君が言った通りでした。

「まじかぁ…」

「ああ、ホントびっくりだ」

「ひょっとして押し入れのシミは…」

「そうだな。彼女は妊娠していたんだな」

「それで彼女を殺したのか」

「それが原因かどうかは判らないよ。新聞には書いてないから」

「でも、あり得るな」

「ああ、あり得る」

あたしと今井君は二人で納得でした。

たぶん、あのシミは殺された彼女の怨念が

胎児という形になって現れたのでしょう。

怖い夢を見るって言ってたのは、

そういうことをしたからなのだろうと思いました。

寮内はもとより会社内もその話で持ち切りで、

上司は「辞めてくれてて良かったぁ」と本音を漏らしていました。

あたしも心の中でそう思っちゃいました…。

 

その後、酒井君が入っていた部屋は使用禁止になりました。

短い期間でしたが、今でもよく思い出してしまいます。

あの寮は今はどうなっているんでしょう。

あたし、あのシミにさわちゃってるんだよね。

いまさらながら、あ〜気持ちわりぃ!

 

さて、少しは怖かったでしょうか?

怖くなくても寒い話にはなってますよね。

そういった意味では、

みなさんに「涼」をお届けできたんじゃないかな…。

…。

ごめんね、いっつも寒い話ばっかりで。

 

また怖い話書こうかな。

だから違うって、寒い話じゃないって…。

次は頑張るから、期待してね。

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